生理中の不眠を解消するには?穏やかな眠りのためにできること
生理中はホルモンバランスの影響でイライラや気分の落ち込み、腹痛や腰痛などの症状を訴える女性が多く、生理はブルーデイとも呼ばれています。
人によってさまざまな生理のタイプがありますが、実はその症状の1つに不眠があるのはご存じですか?
生理中といえば眠くなるイメージがありますが、実は月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)が原因で不眠を引き起こすこともあるのです。
この記事では、生理中に不眠になる原因と対処法についてご紹介していきます。
生理中に不眠になる理由
生理中に不眠になる理由はさまざまです。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があり、時期により分泌量が増減します。
エストロゲンは排卵前に分泌がピークに達するホルモンで、子宮内膜を厚くする、乳房の成長など女性らしい体を作る、髪や肌の潤いを保つなどの作用があり、通称「美容ホルモン」と呼ばれます。
プロゲステロンは排卵後から生理前の黄体期に分泌が増え、子宮内膜をやわらかくして妊娠に備える、妊娠中の子宮内膜維持、基礎体温(眠っているときの体温)を上昇させるといった働きがあります。
プロゲステロンには眠気を誘う作用もあるため、生理前の黄体期には眠くなりやすいのですが、生理が始まると分泌量が減少し、逆に眠気を感じにくくなるのです。
また、人間は体温が下がることで眠気を催します。本来生理が始まると、エストロゲンの作用で基礎体温が下がりますが、エストロゲンが十分に分泌されず体温が高いままだと、寝付きが悪くなります。
生理前にむくみや便秘などの不調がある人や、子宮内膜症や子宮筋腫など婦人科系疾患のある人は、ホルモンバランスが乱れている証拠なので、より不眠になるリスクが高いでしょう。
加齢の影響も見逃せません。40代後半の更年期になるとプロゲステロンの分泌量が減るため、ただでさえ生理周期のなかでプロゲステロンの分泌が少ない生理中は、より不眠になりやすくなります。
生理痛
生理痛がある場合、下腹部痛や腰痛がつらく眠れないことも。さらに悪化した月経困難症では下痢や吐き気、頭痛、めまいといった身体症状のほか、イライラ、憂鬱などの精神症状も伴うため、より眠りにつきにくくなります。
経血の漏れ
寝ている間に経血が漏れるのではないかと気になり、それがストレスになって不眠となることも。
特に生理開始時期の1〜2日目は経血量が多いので、シーツを汚さないか心配で眠れなくなる人が増える傾向があります。
生理中の不眠の対処法
それでは、生理中の不眠にはどういった対処法が有効なのでしょうか?
普段から睡眠のリズムを整える
女性の体は個人差があるものの、28日周期で変化しており、大まかに月経・卵胞期・黄体期の3つに分けられ、卵胞期と黄体期の境目に排卵期があります。
月経後〜排卵までの卵胞期は心身ともに調子が良く、髪や肌もツヤツヤ、仕事や勉強も捗る時期で、俗に「キラキラ期」と呼ばれることも。
卵胞期には調子が良いあまり、ほかの時期よりも仕事や家事を頑張りすぎる、または夜遅くまで遊びがちですが、そこで睡眠不足やストレス過多になるとホルモンバランスが乱れ、次回の生理にも響いてきます。特に生理が重い人は、解放感でハメを外しやすいので気を付けましょう。
生理は1ヶ月の体の通信簿。生理中の不眠は、生理以外の日にどう過ごしたかが反映されます。日頃から規則正しい睡眠のリズムを整え、十分な睡眠で心身ともに休息させるようにしましょう。
食事に気を使う
食生活の改善も、不眠の解消のためにはとても重要。特に意識的に摂取してほしいのは、鉄分を含む食品と大豆製品です。
生理中は経血と一緒に鉄分が排出されやすいため、貧血になりやすいです。貧血は不眠の原因となるので、意識して鉄分を多めに摂取するようにしましょう。ビタミンC、動物性たんぱく質、クエン酸など、鉄分の吸収効率を高める栄養素と一緒に摂取するのがポイントです。
また、大豆製品に含まれる大豆イソフラボンはエストロゲンと似た働きを持つため、エストロゲンが十分に分泌されず、体温が下がらないことで不眠を引き起こしている場合には効果的と考えられます。
大豆製品に多く含まれているマグネシウムは子宮の収縮を抑制する働きがあるため、生理痛を緩和し、不眠症状を和らげることも期待できます。
体の冷えも不眠を招くので、しょうが、人参、ごぼうなど、体を温める働きがある食材を摂ることも大切です。
漢方薬を飲む
疲労や冷え、イライラなど、不眠の原因となる症状の軽減には、漢方薬も効果的と言われています。
月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)など、生理前のイライラは精神科や心療内科でも診断、抗うつ剤や睡眠導入剤の処方が可能ですが、西洋薬は根本的な体質改善をするわけでなく依存性もあるので、漢方薬をおすすめします。ただし、即効性は低いため、長期的に服用して様子を見ることが必要です。
また、漢方薬は自然のものなので安全と思われがちですが、自分の体の状態に合わないものはかえって症状を悪化させることも。漢方薬を服用する際は自己判断で選ばず、腕が確かな薬局で相談し正しく処方してもらいましょう。
ストレッチ、ツボ押し、頭皮マッサージをする
慢性的に体が緊張している状態だと、眼精疲労や肩こりを起こしやすく、それが原因で不眠になっている場合があります。
ストレッチやツボ押し、頭皮マッサージなどで首、肩、頭皮を定期的にほぐし、体を緩めてリラックスさせましょう。
眠りにつきやすい環境を作る
食生活や運動は気にかけていても、体に合わない寝具を使っていることで不眠を引き起こす場合もあります。
マットレスや枕の硬さ・高さが合わないと体に負担がかかるためリラックスしにくく、寝付きが悪くなったり、中途覚醒にもつながったりします。
高反発マットレス、頚椎のS字カーブを維持して理想的な寝姿勢を保てる枕など、疲労回復をサポートする機能性の高い寝具を選ぶことをおすすめします。
生理中の不眠を防ぐために注意したいこと
ここまででお伝えした不眠に効果的な対策を取り入れるのはもちろんですが、逆に、生理中不眠になりやすい要因を取り除くことも大切です。
薄着をしない
人間は、深部体温(体の内部の温度)が下がることで眠気を催します。
深部体温を下げるときは、体の末端である手足から熱を放出させますが、手足が冷えていると交感神経が緊張し、手足の血管が収縮して体の中心に血液が流れていきます。すると体の熱が放出されにくく、深部体温が下がりづらくなり、スムーズな入眠ができなくなるのです。
薄着をすると手足が冷えやすくなるので、体が冷えている人は十分に着込んで、暖かくしましょう。
それと、入浴する時間は就寝の2~3時間前がおすすめです。湯船に浸かり全身を温めると、ちょうど就寝前に体温が下がって、入眠しやすくなります。
就寝前に明るい画面を見ない
眠気を促すメラトニンというホルモンは、光の刺激により分泌が抑制され、しかも、パソコンやスマホの画面から出るブルーライトは交感神経を刺激し、脳を興奮させて寝付きを悪くします。
また、生理では交感神経が優位のときに子宮が収縮し、子宮内膜を排出(排血)します。そのため、本来副交感神経が優位になっている夜間は排血しないのですが、寝る前にテレビやスマホを見ると自律神経がうまく切り替わらず、寝ているときも交感神経が働き、排血してしまうのです。
睡眠時に経血が漏れるのが不安で眠れない人は、就寝前に交感神経を刺激しないようにすることで改善が期待されるので、生理中は寝る前の2時間からは、テレビやスマホなどの強い光を発するものを見ないよう心がけましょう。
無理に眠ろうとしない
眠くないのに、就寝時間を決めて無理に寝ようとするのは、逆効果。「寝よう」と意識することで交感神経が優位になり、脳が覚醒して余計に目が冴えてしまうのです。
どうしても眠れないときは一度起きてストレッチをしたり、クラシックやヒーリングミュージックなどの静かな音楽を聴いたりして心身をリラックスさせましょう。
生理中の不眠を防ぐためには、日頃の生活習慣を整えることが大切
生理はいわば1ヶ月の体の通信簿。生理中だけでなく、それ以外の時期にも不摂生せず、体をいたわることが結果的に生理中の不眠の改善につながるのです。
生理中に寝付けない、眠りが浅いという悩みを持っている人はもちろん、生理痛・生理不順などのトラブルがある人はホルモンバランスが乱れている可能性があり、今は大丈夫でもいずれ不眠を引き起こす恐れがあります。
ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に、できることから実践してみてください。
睡眠脳波測定により、LIMNEのマットレスでは脳が体を回復しようと指示するときに出るとされているδ(デルタ)波が、非常に多く出ていると確認できました。
【監修者】中島由美
金沢医科大学医学部を卒業後、大学病院で小児科、市中病院で内科医として勤務。
皮膚科、美容皮膚科でも研鑽を積み、2018年にクリスタル医科歯科クリニックにて内科、アレルギー科、美容皮膚科を開設。
現在は内科院長として勤務。